愉話§呑藝春秋[31]春はあげもの。

[承前]

春はあげもの。

画像

……何とも他愛のない駄洒落である。車内吊りで見つけた某角ハイボ
ールの広告で“ハイカラ――ハイボールと唐揚――”に続く駄洒落シ
リーズのようだ。やられた!といえばそれまでだが、少しくやしい。

しかも、揚げ立てで小ぶりなメンチカツは、いかにも“食べて!食べ
て!”という言葉が写真から発せられているように見えてしまうでは
ありませんか

元ネタは、もちろん清少納言の随筆『枕草子』第一段“春は、あけぼ
の”からのもじりである。春に続いて、四季それぞれの時間帯を……

夏は、夜
秋は、夕暮れ
冬は、つとめて


……という風に書き綴っている。千年も昔、二十代から三十代という
今で言うなら若い盛りの闊達な女性が、小気味よくまとめたエッセー
で、彼女がインターネットの御世に生きていれば、ブログなどを書い
たであろうことは想像に難くない。読んではいないが、確か橋本治が
『枕草子』の現代語訳を出版していたと記憶する。

『枕草子』の第一段や第二段を読めば、なかなかに才気煥発で闊達さ
が弾けている様子が見て取れるから、橋本治ならずとも“今の言葉”
だったらどうなるだろうかと考えるのは当然のことであろう。

紫式部の『源氏物語』は、何種類も現代語訳が存在しているのだから
『枕草子』の現代語訳が複数あっても驚くにはあたらないのだ。
                            [続く]

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