雅話§百人一首考[21]~いまこむと~

[承前]

素性法師(そせいほうし)

今来むと 言ひしばかりに 長月の
有明の月を 待ち出でつるかな


うーむ、これもしみじみ読んだ記憶はないなあ。

相手の女性が「すぐ行くわ!」と言ったのに、なかなか来ないで……
と思っているうちに夜が明けてきちゃったじゃん。有明の月とは有明
海に出る月ではあらで、月が空に残ったまま夜が明けるということだ
そうで、いったい何時頃に逢瀬しようと約束したものか、それがずう
っと待ちぼうけを喰らって、気がついたら明け方だったよ、ママン!

何とも悠長な話で、さすがに千年以上も前に生きた人の時間感覚は、
明らかに我々と異なるようである。この21世紀にあって、携帯電話や
インターネットという存在ゆえに、人と人の出会いが想像以上の広が
りを持っていることに気づかされるのだ。

想像以上の広がりではあるけれど、その気軽さゆえ人間関係が希薄に
なってきているのもまた疑いようのない事実かもしれないのである。

夜が明けるまで人を待つ……悠長といえば悠長、呑気といえば呑気な
その分、人間関係の濃厚さがどんなものだったのか想像はできない。
                            [続く]

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