雅話§百人一首考[24]~このたびは~

[承前]

菅家(かんけ)

このたびは ぬさもとりあへず 手向山
紅葉の錦 神のまにまに


菅家とは菅原道真公のことである。何やら縁遠い人だと思っていたら
歌舞伎『菅原伝授手習鑑』のおかげで、少しばかり身近な存在となっ
て、もう10年余りということになる。

もっとも、菅原伝授の中でも『寺子屋』か『車引』ばかり観ていて、
その2演目に道真公は登場せず、ここ数年の間に行われた通し上演で
ようやく道真公が登場する『筆法伝授』と『道明寺』を観ることがで
きた……仁左衛門が演じた道真は、研ぎ澄まされた端正な姿で、その
昔から神格化されていたということがよく理解できたのだった。

道真が詠んで百人一首に採られたこの歌をよく覚えているのは、第一
句“このたびは”と、第二句“ぬさもとりあへず”が醸した、何とも
不思議な雰囲気で、特に“ぬさもとりあへず”というリズム感の悪い
字余りには、いまだに何がなしかもどかしい思いを抱いてしまう……
道真公には申し訳ないけれど。
                            [続く]

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