雅話§百人一首考[35]~ひとはいさ~

[承前]

紀貫之(きのつらゆき)

人はいさ 心も知らず ふるさとは
花ぞ昔の 香ににほひける


高校に入って古文を習い始めた時、一番最初に覚える名前の一人が、
紀貫之だったと記憶している。その他には在原業平だったり清少納言
というところだろうか。

とか……知っているつもりだったのに、実は彼が詠んだ歌は百人一首
所収のこれくらいしか心覚えがなかったりするのはどうしたことか。

むしろ、おぼろげであっても覚えているのは、女性になりすましての
土佐日記のほうだったりして、どうも歌のほうの分が悪い。

というわけで、久しぶりに長谷寺詣をするのに、昔なじみの家を訪れ
たら、ごぶさただったことを軽く責められたのに“ほら、梅の花の香
りは昔のまま”と切り返したという、紀貫之は負けず嫌いだったのだ
ろうかと、この一首を詠んで思ったのだった。
                            [続く]

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