楽話§八月納涼歌舞伎第三部

開幕して3日目の納涼歌舞伎第三部に行ってきた。2本立ての演目は
“十世坂東三津五郎に捧ぐ”と銘打たれた『芋堀長者』と『祇園恋づ
くし』である。ちなみに松竹創業120周年。

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毎年のことながら肩の凝らない演目で、疲れることなく楽しませてく
れるのはありがたい。客席も通常月の大歌舞伎とは違う気軽な雰囲気
が漂っているようだった。

三津五郎が10年前に復活上演させた『芋堀長者』が、息子巳之助の治
六郎、橋之助の芋掘藤五郎で久々の再演。巳之助がていねいに治六郎
を務めていたが、やはり思い出すのは父である故人の、あるべきとこ
ろに体が動く端正な踊りである。巳之助が父の域に達するかどうかは
わからない。それについては後述する。

さて、肩の凝らない2つ目は『祇園恋づくし』という、江戸の職人が
京の祇園祭を舞台に繰り広げる恋模様の喜劇仕立てのお話。

3日目なので、まだまだ台詞の渡しなどなど息の合わないところも見
られたが、客席もよく笑って沸いていた。野暮なことは言いっこなし
ということである。

ところで、巳之助は駆け落ちしようとする手代文吉を務めていたが、
何というか“微妙に怪演”なのだ。そういえば去年の新橋演舞場で観
た、藤山直美主演の『母をたずねて膝栗毛』でも、はじけた役作りを
していて、この先どうなることかと思っていたのだ。

役者になると思い定めたのが遅かった巳之助にとっては、歌舞伎舞台
における自分の立ち位置を模索している最中で、まだまだ試行錯誤を
しているということではないだろうか。三津五郎のように端正な役者
の道とは違った道を辿っていくのか……気になるところである。

主役の勘九郎、扇雀、七之助と鶴松(虎之介代演)と、楽屋落ちてんこ
盛りで客席を沸かせ、テンポよくストーリーが進んで、終演は21時。
立秋の日、少し気温が下がった銀座の通りを駅に向かった。

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