雅話§百人一首考[49]~みかきもり~

[承前]

大中臣能宣(おおなかとみのよしのぶ)

みかきもり 衛士のたく火の 夜は燃え
昼は消えつつ 物をこそ思へ


またもや悶々な御人の恋歌でござる。

昨日観た歌舞伎座の納涼歌舞伎第一部は『おちくぼ物語』で幕を開け
た。もちろん平安時代にものされた『落窪物語』を歌舞伎化した舞台
で、当時の恋愛模様が描かれている。

薄幸の落窪の姫が左近少将と結ばれる、平安シンデレラのお話である
が、話の中で左近少将が実にマメに落窪の姫に恋歌を送りまくるとい
う件が出てくるが、男性が女性の許におもむくという“通い婚”の時
代であるから、基本的に男性上位の世間だったとしても、こと恋愛沙
汰に関しては、女性の側に一定の選択権があったということは想像に
難くない。

というわけで、いかな“プレイボーイ”の左近少将であろうが、相手
である女性の気をひかなければ、恋愛失格なのである。いい男だから
といって無条件にOKというわけでないあたりは、実におもしろい時
代だったっということだろうが、女性が“外”に出ることがきわめて
希という時代であったということも言えるのだろう。

男女の立場が対等であったかといえば、まずもってそんなはずのない
時代ではあっただろうが、それでもそんな中にあって、駆け引きの妙
があって、それなりに自分の意志も主張できたという世界ということ
だったと想像することは可能だったかもしれない。
                            [続く]

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