悠話§定年直前旅[21]オネーギン-下-

[承前]

9年ぶりに入った歌劇場は、内装が見違えるようになっていた。さす
がは財力のあるバイエルンだなあと思いつつ、小腹が空いていたので
地下のビュッフェでゼクトを1杯ひっかけつつ軽くつまんでおいた。

で、最上階よりも1フロア下になる5階席まで上がってみた。これま
では、平土間と2階席しか座ったことがなかったので、さすがに見晴
らしはよろしい。が、それにしても客席がざわざわしている……自分
の席がどこかうろうろしている客が多いのは、劇場に来るのが初めて
ということなのか。というところで、客電が落ちて『オネーギン』が
始まる。

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シュトゥットガルトバレエ団の芸術監督にして振付家であるジョン・
クランコによる舞台は、初演から50年経った今でも、そのドラマ性と
創造的な振付によって色褪せず鮮度が保たれているのではと感じた。

タチアナを踊ったのはルシア・ラカッラ。長いことミュンヘンでプリ
ンシパルを務めていて、タチアナの可憐な少女時代から、侯爵夫人ま
でを巧みに演じ、踊っていたのである。

コールドバレエの複雑な振付は、時にはっとさせられたりもしたが、
これほどまでに物語とバレエとが融合している舞台があるだろうかと
感じさせるものがあった。そういえば、久々にバレエの全幕物を観た
ということに気づいたのだ。

……立ち見席で疲れないだろうかという心配だったが、3幕それぞれ
40分足らずということで、疲れることはなかった。イタリア・オペラ
や、バレエだったら立ち見で観てもいいかなと思ったのである。
                            [続く]

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