秋話§芸術祭十月大歌舞伎夜の部・・・

十月大歌舞伎夜の部を観てきた。『阿古屋』と『髪結新三』の2本。

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玉三郎が、この先『阿古屋』をどれくらい務めるものか。本人次第の
ことであるにしても、あれだけの大きな役だから、一世一代が近づき
つつあると思われる。

話はさんざん聞いていたものの、何しろ初めての阿古屋で、どのよう
な舞台なのか興味は大きかった。

詮議を受けるため引き出された阿古屋が七三に現れた時の姿の大きさ
と美しさには圧倒されたが、見せ場である琴、三味線、胡弓の三曲は
見事に演奏されはしたものの、舞台全体としては正直なところ退屈と
感じてしまったのだ。

詮議する菊之助の秩父庄司重忠の凛とした姿と声はよく、もう一人の
詮議役、亀三郎が務めた岩永左衛門の人形振りが客席を楽しませた。

さて、40分の休憩が終わって『髪結新三』である。今回、他愛のない
理由で観ようと思ったわけだが、まず白子屋に結納を持参する、最初
だけに登場する加賀屋藤兵衛を仁左衛門がという“ごちそう”に続い
て、新三内に菊五郎が肴売新吉という“スペシャルごちそう”という
二人を観たくてという何とも不純な理由である。

それはともかく松緑の新三だが、どうにも青い。口跡がよくないのは
今さらながらにしても、そもそも器用な役者とは言えないから、竹を
割ったような小悪人であってほしいのに、全体が鈍重に感じられてし
まう。舞台上で、ぱっとレスポンスが返ってこないのだ。

せっかく菊五郎劇団や仁左衛門という手練れが周りを固めても、肝腎
の主役が沈んで見えてしまっては、芝居が長いと感じても仕方ない。
だから左團次の家主長兵衛とのやり取りも今一つ乗らず、消化不良の
舞台になってしまった。

菊五郎の肴売新吉は“かっつぉ!かつぉぃ!!”の売り声が気の抜けた
ような二声目に、脱力した笑いが広がりましたとさ。

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