雅話§百人一首考[76]~わたのはら~

[承前]

法性寺入道前関白太政大臣(ほっしょうじにゅうどうさきのかんぱくだいじょうだいじん)

わたの原 漕ぎ出でて見れば ひさかたの
雲居にまがふ 沖つ白波


雄大で伸びやかな一首。意外と感じるほどに恋歌の多い百人一首にあ
って自然描写の歌も少ないわけではないが、恋の歌が技巧を凝らして
手練手管の粋を集めたようなのと違って、ある意味では素朴で、かつ
朗らかな描写であることは、事象に対する見方の違いであろうか。

まあ、自然を描写する時に、複雑な人間関係の駆け引きなどを考える
必要などはないから、解放された気持ちになるのは理解できること。
ではあるが、彼自身も保元の乱などに関係していて、どろどろとした
政治闘争に参加していたから、創作と実像とは裏腹と思われる。

それにしても、やたらと名前の長い人だなあとは余計なお世話だが。
                            [続く]

《百人一首のトピックス一覧》

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック