雅話§百人一首考[80]~ながからむ~

[承前]

待賢門院堀河(たいけんもんいんのほりかわ)

長からむ 心も知らず 黒髪の
乱れて今朝は 物をこそ思へ


男が通ってきて、帰った朝の情景と想いを詠んだ一首である。ただし
直近のこと詠ったわけではなく、剃髪して尼になった後に昔のことを
回想してということのようだ。

短歌の、特にこのような時代に詠まれた歌の約束事の多さには、何と
も辟易したというのが高校時代の古文だった。枕詞はまだ何とかだっ
たけれど、掛詞や縁語が混じってくるに至っては、三十一文字の中に
どれだけ複層した内容が詰め込まれているものかと嘆息した。

枕詞には何の意味もないと言われても、文字面を読んでしまえば、何
らかの意味があるように感じて、それだけで思考が止まることも珍し
くはなかったのである。

この歌について言えば……「長からむ」は「黒髪」の縁語なのだが、
確かに当時の女性の髪の長さはそうだったにしても、作者がそこまで
意識して言葉に関連付けをしていたものか、どうにも後付けじゃない
のと屁理屈をこねてしまった結果、古文の成績が芳しくなかったのは
言うまでもない。
                            [続く]

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