雅話§百人一首考[81]~ほととぎす~

[承前]

後徳大寺左大臣(ごとくだいじのさだいじん)

ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば
ただ有明の 月ぞ残れる


「あ、ほととぎす!」と鳴き声の方に向き直ったら、ほととぎすの姿
はなく、あったのは沈みかかる月で、キツネにつままれたような気が
した……そんな瞬間を、そのまま切り取って詠んだ一首なのである。

ここから百番まで、ともかく知っている歌は合わせて4首しかなく、
大雑把に俯瞰しても四分の一ほども把握していたかどうかということ
が、今回の百人一首を一首一首何かを書いてまとめる作業をしながら
わかったことだった。

同じ日本語という道具を使いながら、千年の時が隔たるとこれほどに
理解できなくなってしまうものかと……もちろん現代語訳をひもとき
ながら、何やかんやとひねり出してきたわけだけれど、時として煮る
ことも焼くこともできない歌に出会って悶絶したことも2度や3度で
はない。

この歌は、自然に覚えたとしか思えないくらい、百人一首に触れた時
以来からずうっと知っていた一首で、それはもうあまりにすんなりと
我が身に取り込まれてしまったという記憶なのである。
                            [続く]

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