雅話§百人一首考[84]~ながらへば~

[承前]

藤原清輔朝臣(ふじわらのきよすけあそん)

長らへば またこのごろや しのばれむ
憂しと見し世ぞ 今は恋しき


平安時代の男性の平均寿命が35歳くらいだったとは、以前にも書いた
ような気はするが、多くの人間がモーツァルトのように死んでいった
というのは、いかなる世間だったのだろう。

30歳を過ぎれば老成して達観するということなのか……これを詠んだ
藤原清輔は七十代という長寿をまっとうしているが、おそらくは冷遇
されていた四十代の頃の作と想像できる。その当時は従五位下という
貴族ぎりぎりであったはずだから、不本意な日々を送っていたはずで
ある。

冷や飯食いと本人は思っていたはずだが、最終的に従四位下という中
級レベルに落ち着いたから、まあまあではと思ったかどうか。七十代
を迎えた清輔が、この歌を読み返して何を思ったのだろう……平均寿
命の倍を生きたわけだから、さぞや思うところ多々あるやに思う。

そんな清輔の年齢に達するまで10年を切ってしまった我が身である。
                            [続く]

《百人一首のトピックス一覧》

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック