雅話§百人一首考[91]~きりぎりす~

[承前]

後京極摂政前太政大臣(ごきょうごくせっしょうさきのだいじょうだいじん)

きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに
衣かたしき ひとりかも寝む


この歌を含めて、あと十首だ……ぜいぜい。

“独り寝の子守唄”というところか。それにしても平安時代の夜具の
質素さというか、単に昼間に着ていた衣類を掛布団代わりにして寝る
というのは、現代人からすれば何とも侘しい光景だと映ってしまう。

その程度でも大丈夫だとするならば、古の人々は相当に寒さ耐性があ
ったということだろう。もちろん、現代人と比べれば間違いなくあっ
たはずと想像する。

霜が降りるとあるから、新暦で11月も半ば過ぎた頃であろう。寒さが
より一層身に沁みる時季ということだ。

きりぎりすで思い出すのは芭蕉の“むざんやな甲の下のきりぎりす”
の一句だが、平安の時代において、きりぎりすは“こおろぎ”を指し
ていたということを、この歌の評釈で知った。
                            [続く]

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