板話§新春浅草歌舞伎~毛抜と千本桜~

若手歌舞伎役者修業の場である浅草歌舞伎に今年も行ってきた。時間
に融通がきくのをいいことに、千穐楽に行ったのである。

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第2部は2演目。歌舞伎十八番『毛抜』では、巳之助が粂寺弾正を務
め、義経千本桜『川連法眼館』は松也が佐藤忠信を務めた。この先の
彼らが、どのように成長していくものか興味は尽きないが、何にせよ
“勉強会”としての性格が強いから、生暖かく観ることにしてはいる
けれど、どうしても点数は辛くなってしまう。

『毛抜』の巳之助は、こしらえがどことなく團十郎のそれを思い出さ
せるようであったし、口跡もやや大げさにしていたが、それが團十郎
のような稚気を醸し出すまでには至らずじまい。だが、何とか弾正の
役を表現しようという意欲は満々と感じた。

それに比べると第1部で与三郎と、大きな主役2つをまかされた松也
の忠信は役としての形が見えてこず、荷が勝ち過ぎの力不足を露呈し
たまま終わってしまった……亀治郎(現・猿之助)や勘太郎(現・勘九郎)
あたりが、同じような年齢で曲がりなりにも務めきったのに比べると
大きな差があることは否めなかったが、ここに来て松也が若手のホー
プとして売り出されるようになった中での試練というところである。

気がつけば歌舞伎に足繁く通うようになって今年で15年になる。相変
わらずながら永遠の初心者から抜け出すことはできないけれど、これ
くらいの年月を観たことで、いくらかではあるが役者の成長や円熟と
いうものをリアルタイムで感じ取ることができつつあるようだ。

そういう意味で、今の浅草で奮闘している若手花形がどのような成長
をしていくものか……我が人生の残り時間は少なくなりつつあるが、
少しでも長く、彼らが成長していく様を見届けたいと思う。

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