悼話§オーレル・ニコレさん(笛吹き)

フルートに親しみ、自分自身も下手の横笛を拭いていた頃から、オー
レル・ニコレの音楽を自らの規範として、彼の演奏を聴いていた。

もちろん、彼のアーティキュレーションを真似したものの、あくまで
真似でしかなかったし、真似すらできなかったことばかりでもある。

ニコレの演奏は、今の例えばエマニュエル・パユのようにスマートに
シェイプされた音楽ではない。パユに比べればニコレのフルートは、
不器用さすら感じてしまう。

だが、その不器用さが誠実さのようなものを醸し出しているようで、
彼が吹くバッハのフルート・ソナタの、凛として揺るがない演奏の中
に聴き取ることができる。

1974年以来、彼の演奏会に数度通うことができたのは、貴重な音楽体
験だったと、今でも懐かしく思い出すのだ。

享年九十

合掌

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