幼話§團菊祭五月大歌舞伎~寺嶋和史~

今年の団菊祭夜の部のお客さんのほとんどが、当月歌舞伎座で初お目
見得となる菊之助長男寺嶋和史が“出演”する『勢獅子音羽花籠』が
めあてだと言っても言い過ぎではなかろう。

画像


というわけで、おめあては幕が開いて20分ほど経ったところで、父で
ある菊之助に抱っこされて花道から本舞台へ……初日は花道を歩いた
が、途中ですっ転んでしまった。どうやら、それ以来抱っこらしい。

舞台で待ち構えるのが、祖父であり人間国宝である二人……菊五郎と
吉右衛門である。そして口上挨拶だが、まあ2歳半の子供のことで、
手で顔を隠しているかと思えば、手にした扇子を放り出す。それでも
お辞儀(らしいこと)をして、手の一つも振れば客席は沸くというのが
初お目見得というもので、そんな30分足らずの一幕であった。

二つ目『三人吉三』は久々“三之助”の顔合わせ。夜鷹から百両を奪
った菊之助のお嬢が「月も朧に……」を口跡爽やかに聞かせてくれた
後、海老蔵のお坊吉三の台詞回しに愕然とした。抑揚も何もなく、無
表情な棒読みで黙阿弥の七五調をやったのである。

記憶をたどれば、いつだったか仁左衛門がやった調子を真似したよう
に感じたが、仁左衛門の台詞回しには情が込められていたのに比べて
今回のそれは情感もへったくれもない無味乾燥な台詞としか聞こえな
かった。

三つ目『時今也桔梗旗揚』“本能寺馬盥の場”と“愛宕山連歌の場”
で、松緑の光秀に團蔵の春永という顔合わせ。正直なところ疲れた。
馬盥の場などは心理劇の趣だったがテンポが重厚に過ぎて、ではもう
一度観るかと聞かれたら、ちょっと考え込んでしまう。

追い出しは『男女道成寺』で、海老蔵の狂言師左近と菊之助の白拍子
花子。

今月も若手がしっかり働かされていた。大看板が七十代、八十代とな
ってしまった今、待ったなし状態になっていることを痛感している。

《歌舞伎のトピックス一覧》

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック