欧話§老後旅事始~パルジファル[上]~

[承前]

パルジファルに始まる3公演の席は平土間最後列一番端である。ある
意味、気楽に観ることができるだろうとリクエストして買ったのだ。
だから、平土間の客席すべてを見渡すことのできる席でもある。

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すべての扉が閉められ、客電が落とされると、神秘の奈落と呼ばれる
オーケストラ・ピットの照明が浮かび上がり、パルジファルの前奏曲
が立ち上ってくる。

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前回、2008年にパルジファルを観た時は10列目くらいで、色気のある
サウンドに驚かされたが、それと比べて20列も後方の今回に座ると、
あっさりさらさらとした音色だと感じるのは、指揮者の違いでもある
ということか……前回はダニエレ・ガッティ、今回はハルトムート・
ヘンヒェンの指揮だが、さてどうなのだろう。

幕が上がると舞台には半ば崩壊した教会の内部が建っている。旅装の
男性数人が修道士に見送られて旅立っていくが、最初は巡礼者なのか
と思ったものの、難民だとわかる。設定は中東の紛争地域のようだ。

そんな地域に実際にキリスト教会が存在しているのか、寡聞にして知
らない。仮に架空の存在ということであれば、設定に無理がありはし
ないかとも考えた。

グルネマンツは引退した修道士として登場してくるが、ゲオルク・ツ
ェッペンフェルトの存在感が素晴らしく、グルネマンツこそ主役では
ないかと思わせるものがあるほどなのだ。
                            [続く]

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