欧話§老後旅事始~歯医者に行った件~

[承前]

旅行前の要らぬ予感が現実のものとなってしまった……マーフィーの
法則と言えばいいものか、奥歯の金属詰め物が外れてしまったのだ。

『トリスタンとイゾルデ』の休憩時、いつもと同じくホットドッグと
ガス水を買い、夫婦してもぐもぐ食べている最中に外れたのである。
最初はソーセージの中身で硬い何かかと思っていたが、探っていくう
ちに詰め物と判明した。

とりあえずティッシュに包んで保存し、善後策を考えることにしたが
何ともまた医者に行くことになるのかと気が重くなったのである。

翌朝、朝食もそこそこにレセプションで歯医者の紹介を依頼した。何
軒かとやり取りをしてくれた結果、ホテルから直近で町中の歯医者が
治療をしてくれることになったので、朝食を済ませて出かけた。

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目指す病院は市の中心部で、文化財的建造物の中にあった。2階に上
がって受付で来意を伝え、高い天井の待合室でしばし待たされた後、
治療の部屋に案内されると、ほどなくやって来た歯科医は『神々の黄
昏』の登場人物の名前だったが、実に陽気な人物で開口一番「ようこ
そ、バイロイトの歴史的建造物の歯医者に!」から始まったのだ。

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まあドクターも、日本人がバイロイトに何用かといえば、音楽祭くら
いのものだとは先刻承知なわけで、治療前に手短かに、何を観るのか
などという当たり障りのない軽い話の後、治療が始まった。

的確な治療で無事に仮の詰め物が収まり、握手をして治療室を出た。
最後に受付で治療費を支払うことになったが、心配するほどのことも
なく90オイロ(約1万円)で少しお釣りが戻った程度で済んだ。

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何事も経験だとはいえ、移動日にぶつからなかったのは幸いなことと
少しだけ安堵したのだった。そしてバイロイト滞在の最終日の演目は
『さまよえるオランダ人』で18時開演とは、のんびりなのである。
                            [続く]

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