板話§芸術祭十月大歌舞伎~芝翫襲名~

さて、橋之助改め八代目中村芝翫襲名公演夜の部に行ってきた。

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一本目は歌舞伎十八番『外郎売』で、いかにも祝祭的な舞台が襲名披
露狂言にふさわしく思われた。松緑演じる外郎売(曾我五郎)を観るの
は2004年以来のことである。例によって相変わらずの口跡だが、破綻
なく売り立ての口上をこなしたが“爽やか”というまでにはいかず。

襲名披露口上に続いては襲名披露狂言『熊谷陣屋』で、新芝翫は熊谷
次郎直実を演じる。何度か観ている九代目団十郎型ではなく四代目芝
翫型で、ほぼ半世紀ぶりの上演である。

直実のこしらえは、ほとんど赤っ面というくらいの赤ら顔で、まずは
そのことに違和感を抱いた。それぞれの型の細かい違いまでわかって
観ていたわけではないが、最も大きな違いは幕切れで、團十郎型は、
剃髪した直実が花道で編み笠で頭を抱えながら引っ込むところ、芝翫
型は、全員が本舞台で決めて幕というものだった。だから“十六年は
一昔”の台詞も本舞台でのこと。

團十郎型を観慣れているということもあるが、全体に古怪で濃厚だと
感じられるところに、芝翫のいささか過剰な演技が加わったものだか
ら、さらにくどいものと感じたのである。この先に、芝翫型の熊谷を
観ることがあるかどうか……半世紀も上演されなかったということは
やはりそれなりの理由があるものだと感じたのだが。

口上でも、芝翫はいささか過剰とも思える挨拶で、ある意味クラシカ
ルとは言えなくもないが、何というか“うるさい”と感じ、もう少し
すっきりさせてくれれば思ったのだ。

それにしても、芝翫を筆頭に3人の息子……橋之助、福之助、歌之助
と4人が襲名披露をしたのだが、客席の入りは平日であってもほぼ満
員とはいえ、それほどの華やかさを感じることはなかったのは、芝翫
のこれまでの舞台を考えれば無理のないところか。襲名したことで、
橋之助という魅力に乏しかったイメージを払拭して化けてほしいもの
である。

追い出し、玉三郎の『藤娘』は、この日一番の見もの。30分足らずの
舞台だったが玉三郎の可憐さが際立って、何ともうまいもんだなあと
感心しながら歌舞伎座を後にした。

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