中話§タメスティのヴィオラを聴く

月曜日の夜、吉祥寺シアターでアントワン・タメスティのヴィオラで
バッハ、リゲティの無伴奏曲を集めたリサイタルを聴いた。吉祥寺駅
から徒歩数分、客席200足らずという好条件の会場である。

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バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番 C-Dur BWV1009
リゲティ:無伴奏ヴィオラ・ソナタ

******************休憩******************

バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番 G-Dur BWV1007
バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番 g-moll(d-moll)
BWV1004

1曲目のチェロ組曲3番は、どことなく居心地の悪い演奏と感じた。
曲間を繋げてアタッカで演奏されたが、タメスティ自身の気分や楽器
が十分温まっていないこともあって、不安定でまとまりに欠ける演奏
だった。好きな曲だったのでちょっと残念……ヴィオラはチェロから
ちょうど1オクターブ高いので、あるいは音の高さに戸惑ったところ
があったのかもしれない。

2曲目、バッハの間にリゲティのヴィオラ・ソナタを挟むというのは
現代音楽慣れしていない人間にとっては不安要素だったが、音楽と楽
器が一体となった印象。緊張を途切らせることなく聴けたのである。
途中の楽章の間で、付けていた弱音器を外し、舞台下手に投げたのは
パフォーマンス的だなあとも感じたのだった。

休憩後はすっかり安定、楽器も鳴るようになって、チェロ組曲1番は
満足のいく演奏を聴かせてくれたが、この日一番の聴きものは、最後
に演奏されたパルティータ第2番である。ヴァイオリンの原曲はニ短
調だが、ヴィオラは五度低いのでト短調での演奏となる。それゆえが
チェロ組曲とは逆に腰の座った演奏となったような気がする。

実は聴くのが苦手な曲だったりするのだが、アレマンデに始まって、
終曲にして大曲のシャコンヌまで、揺るぎない音楽を聴くことができ
た。そういえばこれほど小さなキャパシティで、ここまで優れた音楽
家の演奏を聴く機会はなかった……たった一人の演奏家と二百人足ら
ずの聴衆が対峙するという貴重な機会を与えれらたことに感謝。

カーテンコールの時にタメスティは楽器を持ってこなかった。アンコ
ールはなしというわかりやすい意思表示である。

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