江話§上京日記[15]下宿生活を振り返る

[承前]

15回短期集中の上京日記は今回でおしまい……高校を卒業した18歳半
の人間が、都会の真ん中でぽつんと暮らし始めたわけだが、本人はそ
れほど気負っていたわけでもなく、むしろ田舎の実家から解放された
ことのほうが強烈な実感としてあった。

早く家を出て行きたかったことは、代々木の下宿への引っ越しが終わ
った最初の晩、一人ひそかに“やった!”とガッツポーズをしたこと
からも理解してもらえるだろう。

当時の田舎町は様々な意味で閉塞状況にあり、そのまま暮らし続ける
としたら、成人してからの展望が不透明なのは明らかで、何とか打開
したいと見通しもなくあがいての上京なのだった。

そうするしかなかったとは今でも思っていることだし、結果としては
第二志望の大学に合格したことは良しとしつつ、そうであったが故に
望外な会社に就職して37年半のサラリーマン生活をまっとうできたと
思っている。

人間、先々に何が待ち構えているものなのか、予見することなど到底
できるはずもないことだが、もしもタイムマシンがあってその時に戻
れて、18歳の自分に44年後にどうなっているのか、教えてみたら……
どんな顔をするだろうか。
                             [了]

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