手話§五月大歌舞伎昼の部~彦三郎襲名~

五月大歌舞伎は恒例の團菊祭で、何とも賑やかな興行になっている。

七世尾上梅幸の二十三回忌、十七世市村羽左衛門の十七回忌に加え、
八代目坂東彦三郎が初代楽善に、長男の五代目亀三郎が九代目彦三郎
を、次男の初代亀寿が三代目亀蔵、五代目亀三郎の息子が六代目亀三
郎を、それぞれ襲名するのだ。下は御贔屓より贈られた祝幕。

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というわけでまずは昼の部を観た。彦三郎襲名狂言は『梶原平三誉石
切』……“石切梶原”である。彦三郎の梶原平三に、楽善が大庭三郎
を、そして亀蔵の俣野五郎と一家総出である。

おおよそ予想していたとおり、逃げることなく真っ向勝負で気持ちい
い梶原平三だった。白い半紙に衒いなく楷書の文字を書きつけた……
そんな印象も抱いたが、なまじ小賢しく器用に務めたならば、何がし
か空々しいものを感じただろうが、現時点で彼ができる舞台がこれだ
ということを示したのだ。

これが吉右衛門のような大看板の舞台であれば、そこかしこに変化球
を放ったりして客を引き込んでいくところを、新・彦三郎はそこまで
技巧を凝らすことはできない。だかむしろきちんと演じることで、役
の性根をつかむことができるはずである。変化球を投げるのは、それ
ができてからのことで、いずれにしても、彼の成長が楽しみである。

二本目、義経千本桜『吉野山』は、相変わらずたゆたっている舞踊で
昼食後としては眠気を催す。菊之助の静御前はともかく、海老蔵の源
九郎狐は相も変らぬ台詞回しと、何だか姿勢がよくないと感じたのは
じぶんだけだろうか。

最後の演目は菊五郎の十八番『魚屋宗五郎』は、菊五郎以下、時蔵の
女房おはまに、團蔵の父典蔵といった面々の安定したアンサンブルが
はまって、清々しく後味のいい五月の歌舞伎を観た思いがした。なお
菊五郎の孫で寺島しのぶの長男である寺嶋眞秀(4歳)が酒屋丁稚与吉
役で初お目見得をしている。

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