蘭話§旅はなお[31]旅の反省会(下)

[承前]

エーデルシュトフを口にするまで2回も引っ張る気はありませんでし
たが、結果的にそうなってしまったことを深くお詫び申し上げます。

そうして2年ぶりに口にする――一昨年呑んだのはマリエン広場近く
のビアホールだったが
――エーデルシュトフの、得も言われぬ甘さと
馥郁な麦芽の風味に、涙がこぼれそうになる。

“苦いばかりがビールじゃないよ!”

何と言うか、まさにこの言葉に尽きてしまうような気がする。それは
日本で造られているビールとはまったく違うアプローチで、人々の舌
や喉を刺激するのである。いわゆるグルメの類でも何でもないから、
口に入ってきたあれこれを表現する語彙がほとんどなくてもどかしく
もあるが、味覚だけで感じてもいいんだと自分に言い聞かせている。

こんなことがしたいばかりに寿司や枝豆を仕込んでは、せっせとセル
フサービス・エリアに陣取るのだが、平日月曜日の早い夕方のせいで
周りを見渡すと、ノートパソコンを前にしてお茶代わりにジョッキを
傾けていたり、書類をチェックしながら傾けていたりと、曖昧な境界
線上の人たちが目につくのだ。

それでも東京あたりのスタバ何ちゃらなカフェでコーヒーを横にして
いるよりは何がなし“ゆとりってる”ように見えてしまうのである。

↓ビアガルテンは“持ち込んで何ぼ”!
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そんな人たちを横目にした異邦人たる我々は、旅の日常に日本の寿司
や枝豆を持ち込んで、反省会と称してのビールを楽しむのであるが、
彼らにとってのエーデルシュトフが日常(褻-ケ-)であるのに比べて、
我がエーデルシュトフはあまりにも非日常(霽れ-ハレ-)なのだなあと
しみじみ……旅をしなければ呑むことが叶わぬ特別な存在なのだ。

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すいすいと1リットルを空けた後、もう半リットル追加して大満足。
思い残すことなくカスタニエン(栗の木)の森を後にホテルに戻って、
明日は午後の帰国便に乗るだけである。
                            [続く]

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