秋話§秀山祭九月大歌舞伎~逆櫓~夜の部

日曜日に秀山祭九月大歌舞伎を観てきたので簡単に感想を書き記す。

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すっきりとした2本立てで『ひらかな盛衰記』から“逆櫓”と『再桜
遇清水(さいかいざくらみそめのきよみず)』“桜にまよふ破戒清玄”
という出し物。

逆櫓は数年前に一度観ているが、何だかごちゃごちゃしていた芝居で
記憶に残っているものが少ない……筋を頭に入れていても、途中でこ
んがらかってしまう舞台なのだ。この手の芝居は、毎回初めて観るよ
うに思うのだ。

もちろんおめあては吉右衛門の船頭松右衛門(樋口次郎兼光)である。
花道の出からほとばしるような存在感に圧倒される。大音声の口跡で
もなければ、派手な動きを見せるわけでもないが、吉右衛門の内から
滲み出る強烈な何かが表現のエネルギーとなっているのだと感じる。

加えて歌六の漁師権四郎がきっちりとした芝居で吉右衛門に伍してい
たのも見事。東蔵の松右衛門女房およしも悪くはないのだが、少しば
かり年増に見えてしまうのは損をしていると見えてしまった。

中村吉右衛門七十二歳。この先に彼の逆櫓を観ることができるものか
と思いながらの秀山祭である。

二本目は『再桜遇清水』は、松貫四(吉右衛門の筆名)の脚本になる、
桜姫清玄を題材にした芝居だが『桜姫東文章』は過去に一度だけ、そ
れもコクーン歌舞伎だったので、オーソドックスな舞台とはいえず。
雀右衛門の桜姫、染五郎の清水法師清玄(奴浪平)。

前半の一幕目は1時間20分近くで、いささか冗長な舞台。何より、芝
居の流れを形づくるはずの“薄縁の御剣”の動向が薄まってしまい、
ところどころ姿は見せるものの、結局“あれは何だった?”レベルで
しかなかったのは惜しい。もう少し、一時間くらいまで刈りこんでく
れれば舞台が締まったのではなかろうか。

後半の二幕、三幕で持ち直しはしたものの、二幕で唐突に口入れ屋の
場面から始まって戸惑ってしまったのは、客への説明不足であろう。
そこここに興味を惹かれるものはあったので、あとはスピーディーな
見せ方を工夫してほしい。

終演は21時少し前。日比谷線から千代田線経由で小田急線乗り入れで
いいタイミングの電車があったのだが、駅ホームの表示で小田急沿線
火災のため動いていないとあったので、通常通り京王線で帰宅した。

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