印話§十月大歌舞伎『マハーバーラタ戦記』

というわけで、芸術祭十月大歌舞伎昼の部『マハーバーラタ戦記』を
観てきた。

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序幕、幕開きは重々しくゆっくりである。これは記憶があるぞと見て
いたら、舞台に並んだ金色の神々は全員うつむいていて『仮名手本忠
臣蔵』大序そのままの“人形振り”である。

↓序幕の舞台(歌舞伎座HPより)
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さて、太陽神(左團次)と帝釈天(鴈治郎)が同じ人間の女性に産ませた
それぞれ迦楼奈(菊之助)は平和主義者として生まれ、一方の阿龍樹雷
王子(松也)は争いを厭わない。人間界で止むことのない争いを嘆いた
神々が送り出した二人の異父兄弟は宿敵として相まみえるのだった。

……というのが大雑把な筋で、今回の初上演もなかなかにわかりやす
くできていたと思う。さしづめ大人が読んでも難しい言わば岩波文庫
を子供昔話に翻案されたものという印象である。

台詞の多くが現代風の口調で語られることで分かりやすくなりはした
が、その分叙事詩の深遠さのようなものは失われてしまった。

これはたまたまのことであるが、芝居の中身と今の世相がオーバーラ
ップする部分があり、戦争推進する側と対話で平和を生み出そうとす
る側の対立や、七之助が演じる鶴妖朶王女がまた、某都知事のような
“悪だくみ”を企てたりと、そんなあたりに気がついたお客さんも少
なくなかったのではないか。

インド神話であれ、北欧神話、ギリシャ神話などなど、成立した時代
や地域は変われども、人間社会の写し絵としての役割があることを再
認識したのだった。

義太夫など歌舞伎本来の劇伴に加えて、上手には鉄琴や木琴、打楽器
群が控えて演奏していたが、個人的にはインド音楽よりはガムランの
ように聞こえてしまった。シタールのようなものでもあればと思って
いたら、義太夫三味線がそれらしい音を出している場面もあったが、
意図したものであったのかどうか。

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