琵話§吉例顔見世大歌舞伎昼の部~直侍~

吉例顔見世大歌舞伎昼の部に行ってきた。本水を使った『鯉つかみ』
に始まり、吉右衛門と雀右衛門の『奥州安達原』と、最後に菊五郎の
『雪暮夜入谷畦道(ゆきのゆうべいりやのあぜみち)』の三本である。

歌舞伎座通いが始まって15年、おおよその演目は観たと思っているが
当月の三本は未見で、ましてや“直侍”を観ていないのは意外で、何
度もタイミングを逸してここまできてしまった

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まずは染五郎二役の『鯉つかみ』は、およそ一時間はあるだろうメイ
ンストーリーが緩く、結局最後の本水を使った立ち回りばかりが目立
つことになったが、この演目は納涼歌舞伎の季節に合うものだろう。

二本目『奥州安達原』は、雀右衛門の袖萩である。駆け落ちして親の
勘気に触れ、盲目となって瞽女に身をやつした哀れさが表れていた。
雀右衛門が昼の部一番である。

待たされて待たされて、吉右衛門の安倍貞任が登場するのは、最後の
30分ほどだが、舞台はそこから、より一層濃密なものになっていく。

古典のこうした舞台を観るのはいつもいつも骨だと感じるが、それは
ある瞬間に訪れるカタルシスを待望するゆえなのかもしれない。

そうして、これも初めて観る『直侍』である。徳川の御世の江戸の、
そうであった日常を、気張ることなく舞台にのせて見せているのだ。
時蔵の三千歳との逢瀬もまた至極あっさりしたものである。

そんなことが何ということもなくサラサラと舞台を動かしていく……
その自然さが菊五郎の直次郎なのであろう。この先、菊五郎の直次郎
観る機会がどれほどあるものかはわからないが、もっと早い時期から
彼の直次郎を観ていればと、それだけが残念なことだった。

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