比話§文体を真似てみしこと

何か物を書くのに、他人の文体を真似て書こうと試みることは普通の
ことなのかどうか。

これまでに一度だけそんな真似をしたことがある。中学校3年生の時
『赤ずきんちゃん気をつけて』という庄司薫の小説が芥川賞を受賞し
て、これはと思いつつ買って読んだ。

登場する商品名が実名だったり、東京の地名がそこここに登場してく
るので、まずもって田舎の中学生にはそれが刺激的だった。そして、
主人公である薫くんの独白で進んでいくストーリーの文体の語り口に
心を奪われたのである。

感化しやすいというならまさにその通りで何の否定もしないが、まだ
まだ柔らかかった頭に庄司薫の文体が沁み込んで、それを自分なりに
文章化しようと試みたのだ。

何とも無謀なことであるなどと、当時はそんなことを考えもせずで、
小説の本質はどこへやらとばかりに、薫くん口調の文章を綴るまくっ
たのだった。

その揚げ句が卒業文集に書いた一文である。どうしようもない自分語
りを滔々と繰り広げたのだ……あたかも庄司薫が自分の中に憑依して
きたかの如く。

その後、そんな文章をもう長いこと読み返すことなどしてはいない。
長じて“恥の概念”が自分の中で成長してきた頃に読み返してみたが
あまりに恐るべき自己陶酔に半分も読むことができず閉じてしまった
……これこそ、まさに黒歴史そのものなのである。

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