邂話§尾瀬夏逍遥[6]近くて遠山の金さん

[承前]

食後の散歩から戻ってきたら、何やら帳場あたりがざわついていた。
どうしたんだろうと見ると、韓国のお客さんが尾瀬沼からようやく戻
ってきたところだった。夏場とはいえ、19時到着とはさすがに遅い。

どうやら意思疎通に苦労している様子だったので、ちょいとばかしの
お節介を発動して簡単な通訳を買って出た。すると「色々と聞きたい
ことがあります」と言うので、彼が夕食を済ませるまで玄関に設えら
れているテーブルで待つことにした。

ほどなく夕食から戻ってきた彼から缶ビールをおごってもらった……
まあ、情報提供料だと思ってありがたくいただく。

まずは簡単な自己紹介から始めたが、大学医学部の教授であるとのこ
と。的確できちんとした英語を話すのも当然のことだと思いながら、
話は尾瀬のあれこれへと。

そこは“昔取った杵柄”なわけで、彼が広げた地図を前に、ルートの
説明を試みる。コースについての基本的な情報が不足しているようで
思いもかけずマイナーな登山道について聞かれたりしたものだから、
まずはメインルートのいくつかついて語ることから始まる。語りなが
ら自分の中の情報を整理する作業もしなければならない。

自分自身が長いこと常識として受け留めてきたあれこれを当然のこと
として話しても、理解してもらえないのは珍しくもないことなのだ。

とりあえず大雑把に概要を話しているところで消灯時間が近づいてき
てしまった。残りは翌朝、鳩待峠に下山する彼と途中まで歩きつつ、
もう少しお節介をすることにした。
                            [続く]

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