浜話§三月大歌舞伎夜の部~力み過ぎ猿之助~

三月大歌舞伎夜の部を観てきた。演目は『盛綱陣屋』に始まり“口直
し”の『雷船頭』を挟んで『弁天娘女男白浪』の三本立て。

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『盛綱陣屋』を観るのは三度目くらいだろうか。十八代目勘三郎襲名
狂言と、歌舞伎座柿落公演で仁左衛門が盛綱を務めた時以来だろう。

仁左衛門の盛綱を中心に行き届いたバランスのいい配役だと感じた。
序盤はやや重いかと思ったが、徐々に濃密な舞台が造り上げられて、
贋首の場面で仁左衛門が見せる緊張感に満ちた舞台上の一芝居の円熟
した様には、息を呑むばかりだった。

合わせて左團次の和田兵衛秀盛、歌六の北條時政といった立役から、
雀右衛門の篝火をはじめとする女形陣まで、息詰まる舞台が展開して
いって充実はしていたが、疲れる1時間45分。

高綱一子小四郎を務めたのは勘九郎の長男勘太郎。長丁場を健気に務
めおおせたのである。そして、ここに到ってようやく『盛綱陣屋』が
“見えてきた”ような気がする。

20分足らずの『雷船頭』はコミカルな口直しで、幸四郎の船頭に鷹之
資の雷。幸四郎……踊りはうまいほうだと思うのだが、自己完結して
いるように感じられて面白味が薄い。

そして『弁天娘女男白浪』の弁天小僧菊之助は奇数日が幸四郎、偶数
日が猿之助という日替わり配役。猿之助の弁天を観たくて偶数日のチ
ケット買って楽しみにしていたが、結果は残念なもの。

勢い余ってという以上に、猿之助の弁天が余裕なく力み過ぎて乱暴な
舞台に終始してしまった。正体がばれた後、おなじみの「知らざあ言
って……」の名台詞も、声を張り上げるのが悪目立ちして、期待した
ようにはいってくれなかった。

全体のアンサンブルも『盛綱陣屋』には届かず、白鸚の日本駄右衛門
も相変わらずの口跡で一座の重しとはならず、稲瀬川勢揃いの場には
“らしい”様式美がないままに幕。

改めて、菊五郎の弁天の何気ないようでいて計算し尽くされた舞台を
思い出し、比較してはいかんと思いつつも、この舞台に何が必要なの
かを身をもって示していることを改めて思い至ったのである。

今回は残念だったが、猿之助にはこの先上演を重ねることで持ち役に
してもらいたいと期待しているのだが。

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