新話§エリック・マリア・クテュリエのチェロ

1972年生まれのエリック・マリア・クテュリエは22歳でパリ管弦楽団
に入り、その後アンサンブル・アンテルコンタンポランのメンバーに
なった、現代音楽のスペシャリストと言っても間違いではなかろう。

バッハの無伴奏チェロ組曲が2曲聴けるからと、それ以外のプログラ
ムは観ることもせず、何気なくチケットを買って行った武蔵野文化会
館小ホールだったが、度肝を抜かれるリサイタルなのであったよ……

J.S. バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番 G-Dur BWV1007
ガスパール・カサド: 無伴奏チェロ組曲
              第1楽章 プレリュード ファンタジア
ジョヴァンニ・ソッリマ:ラメンタチオ

**********************休憩**********************

J.S. バッハ:無伴奏無伴奏チェロ組曲第3番 C-Dur BWV1009
伊藤暁:Chains
ジョヴァンニ・ソッリマ:Alone

[アンコール]
J.S. バッハ:無伴奏無伴奏チェロ組曲第2番 BWV1008からアルマンド

……ホールで渡されたプログラムの紙片を眺めて、前半も後半もバッ
ハの無伴奏で始まり、その後に現代の作曲家が2曲ずつ置かれる体裁
だった。1989年生まれのガスパール・カサド――日本人ピアニスト原
智恵子の夫――に始まって、1962年生まれのジョヴァンニ・ソッリマ
が2曲、日本人作曲家伊藤暁の作品だった。カサドとソッリマはチェ
リストにして作曲家でもある。

冒頭、バッハの無伴奏第1番は、最初のG音を長めにゆったりとした
テンポで始まったが、まだまだ様子見と感じた。即興性は溢れるほど
だが、この曲のフォルムがぼやけたように聴こえてしまった……音が
団子になって聴こえたのだ。

そして一転、カサドの無伴奏は1926年の作品で現代音楽になりかかっ
たようなリリカルでロマンチック作品と見たが、ここからクテュリエ
の世界が始まる。

続くソッリマのラメンタチオは、特殊奏法で演奏されるチェロに演奏
者のヴォカリーズが重なって、いきなり異次元に連れていかれたよう
な気持ちになった。前半のこの一曲で客席は大盛り上がり。

後半の第3番は、1番に比べればクテュリエがどう演奏するかという
意図が見えたような気はするが、やはり彼のフィールドは現代音楽な
のだろう。

そして伊藤暁のChainsは、個人的にはこの日一番の聴きものだと思っ
たが、ハーモニクスなど特殊奏法満載のノイジーな演奏は、楽音の一
欠片すらないまま……唖然とするような超絶技巧が展開していった。

プログラムの最後は、疾走するが如くに演奏されたソッリマのAlone。
途中、ゆっくりした音楽のあたりは、どこかイスラムの雰囲気も漂っ
て不思議な心持ちになったところで、最後は一気呵成に怒涛のフィニ
ッシュ。

そしてアンコールにはバッハの2番からアルマンドがしっとりと……
日頃聴く機会などほとんどない音楽を聴けたのは耳の驚きだったが、
結局はバッハに回帰してしまう、21世紀の人間としてはまだまだ保守
だなあと思ったのである。

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