徨話§ベルリンとアルプス[10]ばらの騎士

[承前]

この日から金曜日までが怒涛の四連荘で、オペラ、バレエ、オペラ、
オーケストラ・コンサートと続くのだ。日本にいる時はすっかり早寝
になってしまった身だが、こちらに来ると劇場の終演時刻は22時を過
ぎるのが辛い。せめて21時過ぎならありがたいのだけれど。
↓すぐそこに見えるコーミッシェオパー
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↓隣のホテルの前にはベルリンの壁の残滓が
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↓ホテル正面にはバイエルン州代表部の建物
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というわけで、ホテルから歩いてすぐのところに建つコーミッシェオ
パーでリヒャルト・シュトラウスの『ばらの騎士』を観てきた。開演
は18時と早めだが、長いオペラなので終演は22時を過ぎてしまう。

だが、日本で言うなら“小劇場系”の趣を持つこのオペラハウスが、
どのような上演をするものか、タイミングが合ってしまったからには
観るに如かずではないか。座席数は1270で、これはウィーンのフォル
クスオパーとほぼ同じ。

オーケストラピットは小さく、だからコントラバスは指定の半分4本
しか入らない。だか、流れてくる音楽は勢いがあって小気味がいい。
音楽監督でもあるエイナルス・リュビキス(Ainārs Rubiķis)の指揮が
緩みなくオーケストラを引っ張っていると感じた。
↓プログラムと当日の配役など
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演出は2012年まで芸術監督の任にあったアンドレアス・ホモキ。演出
の肝は“時”である。全編を通じて、観る人間に時を意識させるよう
になっている。
↓コーミッシェオパーのトレイラー

例えば第2幕。ばらの騎士としてやってきたオクタヴィアンがゾフィ
ーと対面する場面……彼ら二人以外の舞台上の人間は全員がストップ
モーション状態となってしまう。そしてファニナル家の大きな時計は
12時5分前で止まったまま。

そして第3幕の最後、呆然と立ち尽くす元帥夫人の前にビブス姿のサ
ッカー少年が現れ、彼女が拾おうとしていたゾフィーのハンカチを持
ち去って行って幕。時の耽美、時の残酷さが巧みに表現されていた舞
台と強く感じたのだ。

こうしたあたり“小劇団系”で小回りの利くアンサンブルが巧く機能
していたと感じるのである。脇役の隅々までするべき動きが徹底され
ていて、それからすれば、ウィーンやミュンヘンのステージは“大歌
舞伎”と言えるだろう。

字幕設備は舞台の上ではなく、椅子の背に一つずつ設置されていて、
しかもドイツ語、英語、フランス語などに加え、トルコ語まで選択で
きるようになっていて、ベルリンの土地柄が強烈に印象付けられた。

常連と思しき客も多く見受けられ、初めて訪れた1998年には劇場存続
運動が行われていた時からはすっかりその立ち位置が確固たるものに
なったことが確認できた。今回のベルリン滞在一番の収穫である。
                            [続く]

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