愉話§バイエルン放送交響楽団<下>

[承前]

……ひょっとして、実演でチャイコの5番を聴くのは初めてではない
だろうか。ついでに4番も6番も2回ずつくらいしか聴いていない。

バレエ鑑賞歴の長い同居人の頭の中では、チャコフスキー作曲の交響
曲第5番による振り付けができあがっていたようで、終演後も“やっ
ぱバレエ音楽よねえ”と言っていたが、鑑賞歴の短い人間でも似たよ
うな感想を抱いたのは偶然ではない。

それにしても凄い演奏だった。チャイコフスキーのオーケストレーシ
ョンの巧みさを腹一杯堪能したという感じか。どんな伴奏音型であっ
ても音がぼやけることなくくっきりとした輪郭で聴こえてくるのは、
チャイコフスキーの音楽を楽しむ上でとても大事なことではないか、
それを気負うことなく表現しているということに舌を巻くのである。

放送響という先入観もあろうが、どちらかといえば色彩感があっさり
しているように感じたが、むしろそれがチャイコフスキーでも吉の方
ほうに転がったような気がしないでもない。

ブラームスの時から楽音以外の唸りみたいなものが聞こえていた。最
初は、管楽器のリードのびびりだろうかと思っていたのだが、それも
おかしい。休憩になったところで同居人が“それにしてもヤンソンス
の唸り声がw”と言ったので合点がいった。チャイコフスキーでも実
によく唸られて……何しろヤンソン師と対面しているものですからw

というわけでブラームスからさらにパワーアップしたチャイコフスキ
ーを堪能したが、個人的にはブラームスのほうに軍配をあげたい。チ
ャイコフスキーの天才的な管弦楽の彩りに、時として感性がお留守に
なるような気分になったりするのだ。そういう意味ではブラームスの
音楽のほうが集中度が維持できたようである。

ちょっと気になったのは、トランペットが弱いかなということだが、
これも斜め後ろから聴いていたので正面からでないとわからない。

アンコールは2曲。シベリウス『悲しいワルツ』にヨーゼフ・シュト
ラウス『憂いもなく』だった。前日の川崎は“アンコール祭り”だっ
たとのことだが、この日はあっさりというところ。とはいえ『憂いも
なく』の超速テンポには、一気にニューイヤー・コンサートの世界に
引きずり込まれたかのような錯覚に陥った。

天気のいい日曜日のマチネーで御機嫌にしてもらって、その後は銀座
なんかまで遠征して買い物、最後は新宿に戻って晩飯。
                             [了]

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