懐話§昭和三十年代~味の素~

[承前]

物心ついた時には、食卓に赤い小瓶の味の素が鎮座ましましていた。
それで、何くれとなく振りかけることが当たり前という状況ができあ
がっていたのだ。

刺身につけるための小皿に注いだ醤油にパラパラ、白菜などの浅漬け
に醤油をかけたところにさらにパラパラ……何やらおまじないのよう
な……これでさらにおいしくなるのだと言い聞かせているかのごとく
の食卓での儀式だったのである。

それに加えて、どこからそんな話が湧き出てきたのかはわからないが
“味の素をなめると頭がよくなる”などという民間信仰まで流布して
いたのだ。

そう言われれば試さない手はないだろうと、何度か容器から手の平に
パラパラしてなめてみたが、奇妙な味がするだけで、その後頭がよく
なったなどという効果などは現れはしなかった。

その後NHKの料理番組を見ていた時、明らかに味の素を使っている
のに、ことさら商品名を出さず“化学調味料”と番組内で呼ばわって
いたことを不思議に思った。もちろんその理由は後で判明したが。

その後の味の素はというと、ネガティブ・キャンペーンというほどの
強力な動きではなかったが、マイナスイメージを持たれてしまったこ
とで食卓から消えた家庭も少なくなかったと思われる。

そして今はというと、特に中華料理の世界では味の素は健在のようで
東南アジア圏では昭和時代の日本以上に活用されているらしい。日本
で話題になるのは、ラーメン屋のスープに味の素が入っているかとい
うことで、ネット上で盛んに“化調”か“無化調”という議論が行わ
れているのだ。
                            [続く]

【去年の今日】惜話§ありがとうシビック!

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