板話§中村座三月大歌舞伎昼の部[下]

[承前]

2本目の『一條大蔵譚』“檜垣”と“奥殿”で、勘九郎が一條大蔵長
成を演じた。先代勘三郎から当代勘三郎、そして息子へと連なる“中
村屋の芸”ということである。

とはいえ、ここでは勘九郎の生真面目さが裏目に出てしまったかなと
感じた。きちんと考え抜いて芝居をしているのは当然のことではある
けれど、作り阿呆が意識的に強調され過ぎていたようで、祖父や父の
ような融通無碍となるには、しかるべく時が必要ということなのだ。

仁左衛門が吉岡鬼次郎でつき合ったのは、先年の勘三郎襲名を思い起
こさせたが、格の違いがどうかなと心配した七之助のお京がキリリと
した舞台を務めていたのは驚いた。あるいは、一連の襲名披露興行で
勘九郎以上の伸びを見せたのではないだろうか。女形としての性根が
座ったようにおもったのである。

亀蔵の勘解由もよかったのだが、やはりというか92歳の小山三演じる
鳴瀬には勝てない。あの存在感は何なのだろうな……どうぞお大事に
して、勘九郎の子息が初舞台を踏む時も舞台に立ってくださいまし。

3本目は舞踊『舞鶴雪月花』で、七之助のしっとりとした“さくら”
から仁左衛門と千之助の“松虫”が続き、最後にパンダのような勘三
郎の“雪達磨”が、日差しに抗って溶けまいとする様子を巧みに踊っ
て、最後には舞台奥が開き、外の風景の中に真っ赤な太陽が昇るとい
う趣向。

追記:一條大蔵“奥殿”の途中で2階席の老婦人が急病となり、救急
車を呼ぶ騒ぎになってしまった。遠くないところにいたので、ちょい
とばかり気が気ではなかったというハプニングもあり。 
                                 

《歌舞伎のトピックス一覧》

"板話§中村座三月大歌舞伎昼の部[下]" へのコメントを書く

お名前
メールアドレス
ホームページアドレス
コメント