街話§神保巷塵[14]“L”のKさん

[承前]

創業して既に百年を超えた神保町のビアホール“L”は、初代から数
えた現在、四代目がビールの注ぎ場で店内を取り仕切っているのだ。

彼の父親である三代目は今年の春先に逝去。二代目、三代目、四代目
とともに数十年の間“L”を支えていたのは、三代目の妹で四代目の
叔母であるマネージャーのKさんなのだった。そんな彼女が区切りの
年齢になったということで店の仕事から引退したのは先月末のこと。

……そういえばと、自分自身が“L”に通い出して何年になるのかと
数えてみたら40年を超えていた。大学浪人で都内の予備校に通い始め
たのと同時期に初めて“L”に入ったのだが、さて店の存在をどのよ
うにして知ったのか、今となっては記憶の外であるが、同じ店に40年
通い続けたのは、後にも先にも“L”だけだということに気がつく。

今や、家族経営で店を切り盛りすることが稀有になってきたご時勢に
あって、一つの家族で百年以上連綿と店を営んできたことには、ため
らうことなく敬意を払いたい。

彼女の最終日となった10月31日は、おりしも古本まつりたけなわとい
うことで店内は満席……お疲れさんの挨拶など簡単に済ませてきた。
                            [続く]

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