雅話§百人一首考[43]~あひみての~

[承前]

権中納言敦忠(ごんちゅうなごんあつただ)

逢ひ見ての のちの心に くらぶれば
昔は物を 思はざりけり


この歌を目にした時、何の考えもなしに“昔は思慮が浅かったなあ”
と老人が述懐しているのかの思ったのだった。

それがどうも“熱々”にして“ラブラブ!”な恋の歌のようである。
ごちそうさまと片づけておしまいにしたいところだ。と思いながら、
ふと、平安時代のラブラブな恋人たちはどのような会話をしていたの
だろうと想像したのだ。

正しくは、想像しようと試みはしたものの、とんと見当がつかぬ……
というのが正直なところである。

その当時、話題になりそうなことといえば、まあ“人間関係”の類と
それにまつわる噂話のようなもの、後は時節柄の話くらいのもので、
どこの店がうまいからこんど行ってみようじゃん、みたいなグルメ話
などありようもなかっただろう。

だからこそ、より濃密に恋愛に集中することができたのではないかと
単純素朴に思ったりするのは、今の時代は恋愛そのもの以上に、その
ためのツールはキリもなく存在するものの、肝腎の本質まできちんと
たどり着けているものだろうかと疑ってしまったというのが、この歌
について書きつつ、並行して考えていたことである。
                            [続く]

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