雅話§百人一首考[55]~たきのおとは~

[承前]

大納言公任(だいなごんきんとう)

滝の音は 絶えて久しく なりぬれど
名こそ流れて なほ聞こえけれ


これ……知ってますよね、有名ですよね!

で、自然の滝が枯れたのだと思っていたら、大覚寺で造園された中に
人工の滝が作り込まれていて、それがすっかり絶えて水音ひとつ聞こ
えなくなっていたという一首である。

しょっちゅう前を通っていた建物が、ある日取り壊された……その瞬
間にその建物にどんな店があったのか、どうしても思い出せないとい
うことは珍しくも何ともない。それがけっこう繁盛していた店だと、
後で思い出して、自分の記憶力に疑問符をつけることも珍しくない。

古の人たちの記憶力は、今の我々とは比べ物にならないはずだから、
そんな滝があったということを覚えているくらいは造作もないことで
あろう。

そんな彼らの記憶力が、どんなファンタジーを生み出していたのか、
彼らの時空がどのようなものだったのか、少し興味が出てきたのだ。
                            [続く]

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