雅話§百人一首考[64]~あさぼらけ~

[承前]

権中納言定頼(ごんちゅうなごんさだより)

朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに
あらはれわたる 瀬々の網代木


[60]で小式部内侍が“おおえやま”を詠んで、やり込められたのが、
定頼ということのようである。そもそも軽薄というかおっちょこちょ
いの性質ということのようだ。

それはおいておくとして、これはどうということのない描写の一首は
どのような趣向があるのだろうかとは、何とも個人的な印象である。

それでは定頼が凡庸な歌詠みであったのかといえばそうではない……

水もなく 見え渡るかな 大堰川
峰の紅葉は 雨と降れども


……という歌を一条天皇の大堰川行幸の降りに詠んだのだが、上の句
を聞いた父親の藤原公任が“川は満々と水を湛えているのに、こいつ
は何を詠んでいるのだ”とひやひやしていたら、下の句がかくのごと
く続いたので、その趣向に驚き安堵しつつ歌の才に感心したとある。

何とも人騒がせというか、周囲からは風変わりな人間だと見られてい
たのだろう。あまり周りの雑音に惑わされることなく、たぶん豪胆な
資質も持ち合わせていたのだろう。
                            [続く]

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