雅話§百人一首考[73]~たかさごの~

[承前]

権中納言匡房(ごんちゅうなごんまさふさ)

高砂の 尾の上の桜 咲きにけり
外山の霞 立たずもあらなむ


山の上にも桜が咲いたよ、無粋な霞が立って隠さないようにね……と
いうほどの歌である。

日本人の桜好きDNAがいつ頃に体内生成されたのかはわからねど、
こうして季節になるとすべては桜へ桜へと最優先されるのは、平安の
世も今も変わることはないだろう。

秋の紅葉が桜に比肩する美しさでありながら、どうしても桜より上位
に立てないのかといえば、すべては華やかな春の彩りと潔い散り際に
尽きるような気がする。それに比べて紅葉は、深まる秋への寂寥感と
いう意識が強くて、どうにも分が悪いようだ。

とはいえ百人一首にあって、当然ながら桜と紅葉と、それぞれの歌が
取り上げられているのは今さら言うことでもない。そんなことを書き
ながら、窓の外の色づききった木々の葉を眺めては、去りゆく秋を惜
しんでいるのである。
                            [続く]

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