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[承前] 歌手で特筆するべきはヨハネを歌ったテノールのブルクハルト・フリ ッツ。役回りとしてはエヴァンゲリストのような立場で、しかも最初 からフルヴォイスで高らかに歌い上げたのには感心した。さらに歌う 分量も多くて最後は少し疲れたかと感じないでもなかったが、これだ け歌ってもらえればブラボーものである。 ところでマンフレート“カルロス・クライバー”ホーネックであるが 残念なことに祭壇の飾りに邪魔されて、彼の指揮姿を十分に見ること ができなかった。本当にほんの少しだけ、左手をぐるぐる回すクライ バーらしいアクションを見たが、それくらいなものだったのだ。 前々章で書いたように、教会の音響がオーケストラの音色の特徴を殺 いでしまったとしか聴こえなかったのは残念である。もう少しオケが 聴こえてくれれば音楽の印象が書けたかもしれない。繰り返すがオル ガンの音色は本当に見事なものだった。残響が4秒くらいはあろうか という、そんな空間環境で響きが消えていく美しさは格別である。 弦楽器の上昇音に続いてコーラスが高らかに“ハレルヤ!”を繰り返 し歌いあげた後、男声によるグレゴリオ聖歌風のアカペラが微小音で 歌われ、最後の最後に冒頭のド・レ・ソ・ファのモチーフが戻ってき てヨハネの言葉が続き、ようやく大団円となるのだ。 ドイツでは聖ヨハネ祭にあたっていて、そんなタイミングで黙示録に ちなんだ音楽を聴いたのも何かの縁ということだろう。天候が芳しく なくて実施されたところがあったかどうかわからないが、ヨハネ祭の 前夜には山の上で火を焚いたり花火を上げたりもするのである。 かくして『七つの封印を有する書』"Das Buch mit sieben Siegeln" 体験は終わり、表に出たところでバジリカをもう一度見上げて駐車場 へと向かった。車はアルゴイの田園の中を軽やかに走り、気がつけば アウトバーンの入口にさしかかっていたのだった。 [了] 《クラシックのトピックス一覧》 付記:新日フィルの演奏会を聴かれた方は、感想コメントをどうぞ。 |
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