息話§マティアス・ゲルネ『白鳥の歌』

『水車屋の娘』と『冬の旅』が平日だったので、聴くことができたの
は最終日の『白鳥の歌』になってしまった。

前半にベートーヴェンの『遙かなる恋人に寄せて』と、レールシュタ
ープの詩による『白鳥の歌』の前半7曲、休憩後にハイネの詩による
6曲が本プログラムで歌われ、ザイドルの『鳩の便り』はアンコール
として歌われた。実演で『白鳥の歌』を聴く回数がそう多いわけでは
なく、色々ひっくり返してみると『鳩の便り』が『白鳥の歌』からは
独立して扱われているよう――歌曲集全体がD957で、『鳩の便り』は
965A――なのである。

久々に“声の力”でリートを聴かせられる歌手に出会った。ブレスの
長さ、低音から高音までのムラの無さ……、最近の歌手の中では特筆
すべき力を持っている。実はというか『白鳥の歌』は不勉強なので、
どうしようかと思っていたのだが、ゲルネの声に聴き惚れているうち
にリサイタルが終わってしまったのだった。終曲の『影法師』はピア
ノの残響が消えても拍手が始まらず、ゲルネが緊張を解いたところで
拍手が起きた。……“水車屋”ではひどいフライングがあったようで
休憩時はあちこちでその話をしていた。

この日のオペラシティは3階席を閉鎖したものの、1階と2階はほぼ
埋まっていて、日本人の“リート愛好”とか“シューベルト愛好”を
垣間見たような気がした。ただ、リート・リサイタルにしては会場が
大き過ぎるのと響き過ぎて、彼のような声でも拡散してしまうのだっ
た。主催公演だからしかたないが、もう少し小さなホール――紀尾井
あたり――で聴いてみたいものだ。

【去年の今日】省話§クラシックの名曲で持っていないCD(終)

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