笛話§フルートでこんな曲を吹いていた[Ⅱ]

[承前]

龍吟社刊で『シリンクス』を所収した楽譜の中に、バッハの無伴奏パ
ルティータ(a-moll BWV1013)も入っていた。

この2曲とも当時持っていたニコレのLPにあって、吹けるものなら
吹きたいと思っていた曲である。ではあるが、特に一曲目のアレマン
ドなどは、冒頭に休止符があるだけで以降一つの休止符もないという
息継ぎとかそんなものを考えなかったのか>バッハ大先生!

そんな無茶な曲を“ど”がつく素人が何の手がかりもなく吹けるはず
もない。というわけでオーレル・ニコレ師のアーティキュレーション
を必死になって覚えこんだ。

……なーんだ、息継ぎしてるじゃん

である。そうはいっても息の続かないフレーズも出てきて、それじゃ
あどうしようと素人なりに考えたりもして、今思えば恥ずかしい限り
だが“自分なりのパルティータ”のアレマンドを吹き切ることができ
た。その結果、ニコレのアーティキュレーションを台無しにしたわけ
だが。

息継ぎも大変だったが、最後の最後、息も絶え絶えになったところで
止めの一音は2オクターブ上の“A”を高らかに吹き上げなくてはな
らない。Fあたりまでだったら日頃からそう悩みもせずに出せていた
のだが、Gから上のCあたりは人に聞かせられるような音とは言えず
それでもまあ必死になって出せるような努力はした……報われたかは
わからない。

4曲のうちで、2曲目のクーラントだけが、どうしても最後まで吹き
切ることができなかった。

サラバンド以外の3曲にはポリフォニックな効果を出そうとしている
部分があって、実際に演奏するとなかなかにスリリングで、バッハが
単旋律楽器でもポリフォニックな効果が出せるかどうか試みた前衛的
な実験作のようにも思われるのである。
                            [続く]

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