劇話§『夏祭浪花鑑』コクーン[6/14]―表

・・・一日に二度もする芝居じゃないんすよね

……カーテンコールで勘三郎が発した、たぶん“本音”だろう。ほぼ
同年代の人間としては、彼の元気の中に少しだけ老いの匂いを嗅ぎと
ってしまった。同じ事を、実は四月大歌舞伎の時にも感じたような気
がしたのだが確信が持てなかったのである。

誰にでも等しく老いはやってくる。前回まで団七と徳兵衛女房お辰の
二役だったのが、今回は二人の息子に“譲って”いる。断っておくが
それが悲しいとか、そういうことではない。歌舞伎が継承していく芸
能である以上は、そういう行為が宿命づけられているのだ。

お辰を演じた勘太郎は、若さゆえの線の細さはしかたのないものの、
彼らしく誠実でていねいな演技を見せてくれた。

コクーンの入口には一週間だけだが、大阪のシンボルの一つ“くいだ
おれ太郎”
が遠路出張してきて浪花気分の盛上げに一役買っていた。

ベルリン、シビウと移動して作り込まれた舞台は、台詞も動きも危な
げのないもので、だからというか最後まで緩むことなく締まって気が
ついたら終演を迎えていたのである。

そうなったらそうなったで天の邪鬼の虫が起きてしまい、物わかりの
いい芝居に仕立てられてしまったような気もしたりする。そのあたり
カーテンコールの勘三郎の言葉あたりと微妙にリンクしているような
気がした。
                            [続く]

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