芝話§平成中村座『忠臣蔵』Cプロ<Ⅰ>

[承前]

今回の公演のうち2プログラムを観て、歌舞伎役者にとって『仮名手
本忠臣蔵』がまさに彼らの“バイブル”であるということを改めて認
識した。

彼ら歌舞伎役者が、この芝居を大事にして正面から向き合う姿を見た
ようである。だから若いがゆえの未熟な演技であっても、彼らがこの
先も歌舞伎の舞台で忠臣蔵を演じていく過程を見たような気持ちにな
ったのである。

Cプログラムは、大序から始まって二段目、三段目、そして八段目と
九段目『山科閑居』まで。謳い文句としてはサイドストーリーである
加古川本蔵にスポットライトをあてたというところで、片岡仁左衛門
である。何という風格なのだろうか。それに合わせる勘三郎の戸無瀬
は殊勝かつ丁寧に演じている。あるいは安全運転とでも言えるほどの
慎重さと感じた。

このあたり橋之助の若狭之介の一本気に勢いがある。勘太郎の判官は
最初はおっとりと構えて、ぐっと耐える部分を十分に見せて、師直に
切りかかるところでは彼らしい勢いがほとばしりでたのだ。背後から
抱きとめる仁左衛門の本蔵もしっかり踏ん張っていないと、勘太郎の
勢いは制止を振り切って師直を切ってしまわんばかりだったのだ。

曰 古川柳……

本蔵は えんや(塩冶)らやっと 抱きとめて
                            [続く]

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