舞話§壽初春大歌舞伎~春興鏡獅子~

正月早々いいものを見せてもらった。勘三郎が踊った『春興鏡獅子』
の小姓弥生である。

本格的に歌舞伎を見始めたのが2001年の秋のことだから、ようやっと
8年目に入ったのだが、本人の意識には相変わらずの初心者意識が巣
食ったままで、特に踊りについては見る眼が育たないままなのだ。

そうはいっても、ここまで見続けるとそれはそれで自分なりに感じる
あれやこれやはあるわけで、だから今回観た勘三郎には本当に感心し
たのだった。

局吉野(歌江)と老女飛鳥井(吉之丞)に手を引かれて登場したものの、
恥らってすぐに引っ込んでしまう、その風情に思わず見惚れる。再び
舞台に引き戻されて踊り始めるわけだが、その頃には既に勘三郎の世
界が作り出されていたのだ。

小姓の舞と獅子の舞との鮮やかな対比にも驚かされる。そして気がつ
いたことは、踊る動作を最小限に押さえて無駄を省いたうえで最大の
効果をあげていたという風に感じたのである。そして一瞬のことだが
獅子の舞の動作の中に、写真で見た六代目菊五郎を彷彿とさせるよう
な瞬間が存在したのだった。勘三郎が祖父である六代目を常に意識し
て踊っているのは言わずもがなだが、それにしても2年前の2006
同じく一月歌舞伎で観た時には研ぎ澄まされた凄味のようなものが見
受けられたのだが、今回はそういう強さは影を潜め、ひたすら踊りに
奉仕するような印象を持ったのである。

最後に胡蝶を踊った千之助と玉太郎の二人だが、千之助は彼なりに丁
寧に踊っていたのに比べると玉太郎は残念ながら踊れているとは言え
ずに思われた。同じ8歳とはいえ、玉太郎のほうが7か月年少という
以上の差があったと感じた。

夜の部はこの『鏡獅子』を挟んで『壽曽我対面』と『鰯賣戀曳網』の
2演目というシンプルな構成だったがいかにも正月らしくて、例えて
言うなら三段重ねのおせちのお重を堪能したようなものか。

終演も20時20分過ぎとなかなかよい頃合いで、銀座で軽く1杯呑んで
ほろ酔いの帰宅とは幸せなことである。

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