維話§初めてのウィーン[16]こうもり二度目

[承前]

国立歌劇場に行くのが二度目ともなると、少しは“その気”っぽくも
なるような気がしないでもない。

この日のキャストは、主要な役が最初の時とは変わった。ロザリンデ
がグンドゥラ・ヤノヴィッツに、アイゼンシュタインがエーベルハル
ト・ヴェヒターに、そしてグルベローヴァは1月3日にミュンヘンで
カール・ベーム指揮による『後宮からの逃走』でコンスタンツェを歌
うため、別の歌手――正直、少しばかり格落ちしたような印象――に
変わったのである。

ここでエーベルハルト・ヴェヒターというバリトン歌手を初めて聴い
たのだが、既に全盛期は過ぎていて声が出てないのはまだしも、芝居
に品がなくてどうにも好きになれないで終わってしまった。と思った
ら後年、国立歌劇場の芸術監督になったので驚いた。顔つきからして
も、政治力とかそういう方面への色気がムンムンしていたのだった。
そうしたら就任して一年経たずかで急逝したので、二度驚いた。

この日、看守のフロッシュを演じたのは、俳優で演出家でもあるオッ
トー・シェンク。この『こうもり』の舞台も彼の演出であるが、その
当時はとにかく誰が誰だか……という状況で、シェンクがそういう立
ち位置にあって舞台にも立っていたということを知るには、もう少し
時間が必要だったのである。

終演後、ミーハーにも『第三の男』で有名になったカフェ・モーツァ
ルトに行こうと歌劇場の真裏に歩いていったら、指揮のグシュルバウ
アーがミニバンの車の後ろに窮屈そうに乗り込んでという帰宅風景に
出くわしたのだった。

この時の旅行で、そういう音楽家達の仕事の日常のようなものが少し
見えた気がしたのだ。
                            [続く]

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