維話§初めてのウィーン[17]ホイリゲだ(上)

[承前]

1月2日は何の予定も入れてなかった。昼頃は市電に乗って中央墓地
まで音楽家の墓参りに行ったが、冬の墓場の寒々とした印象しか記憶
にはない。そういえばついでにドナウ運河を渡ったすぐ先の遊園地・
プラーターまで足を伸ばして“例の”観覧車――休業中――を真下か
ら眺めたりもしている。

そういえば翌3日の国立歌劇場は、ヴェルディ初期のオペラ『アッテ
ィラ』の上演があり、前日から立見席のために並ぶ行列ができている
のを横目で見たのだ。指揮をするのは、この公演がウィーンのオペラ
デビューとなった(はずの)ジュゼッペ・シノポリだった。ウィーンが
『アッティラ』で沸き立っているなどとは露知らずの間抜けな旅行者
は、もちろんチケットなど買っているはずもない。あまつさえ3日は
フォルクスオパーに行ったりしているのだ。

この日の夜も空いていて、だからここは一つウィーン名物の“ホイリ
ゲ”にでも繰り出してやろうではないかと、市電に乗ってショッテン
トーアで市電38番に乗り換えて30分ほどゴトゴト揺られて、ホイリゲ
が軒を並べるグリンツィンクまで。

ちょっと薄暗くなった頃に到着して、停留所近くにあった一軒に入り
とりあえず1杯。一応考えた作戦はというと、何軒かハシゴをして、
雰囲気を楽しんでみようというものだった。

一軒目では目論見どおりに1杯だけ呑んでお勘定。それで店を出て、
見渡してみて賑やかそうな店だとのあたりをつけて入ってみた……。
店の入口には“新酒あり枡”という印の松だかモミだかの枝が下がっ
ている。

付記:この時の『アッティラ』でエツィオを歌ったのは、今はなき名
バスバリトンで今は亡きピエロ・カップッチルリで、その二幕で観客
のアンコールに応えてアリアをもう一度歌ったりしている。

                            [続く]

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