始話§蕎麦屋狂騒曲

花見がてらの一万歩行脚の途中、八千歩に達しようという頃合いで、
腹が減ってきた。かねて車で通りかかっていて、一度くらいはという
新しい蕎麦屋に入ってみた。

某私鉄の終点駅から歩いて30秒のところに店がある。時間も13時半く
らいで昼時ほどは混雑していないだろうと思ってのタイミングだが、
テーブル席が5、6席の小さい店に入ると、店主とその伴侶と思しき
女性がバタバタとしている。

見れば前客が立ち去ってひとしきりというのに、お盆にのった食器が
片付けられないままテーブルに放置されていた。それに天井から流れ
落ちてくる音楽が蕎麦屋とはミスマッチも甚だしくて食欲を喚起させ
るような類ではない。

そういったあたりのセンスとか気配りとかに問題がありそうなのだ。

それでヱビスの中瓶と葉山葵の漬物をもらう。蕎麦は辛味大根のせい
ろと、同居人は鴨せいろを注文した。大丈夫かいなとビールとサービ
スの蕎麦味噌を舐めていたが、つまみにと思った漬物は蕎麦と一緒に
やってきた……。

それで蕎麦に関してだが“うまい”と思った。つゆも出汁がしっかり
きいていて、ものの数分で食べきってしまった。せいろ一枚の量も、
我々のような世代にとっては過不足はない。というわけで文句を言い
つつも最後はおいしく食べ、お勘定をして残る数千歩の旅に出た。

この店の問題はひとえに“接客にまつわるオペレーション”というこ
とに尽きる。不器用なのは仕方がないが、見るからに客が苛立ちそう
なフットワークは見苦しい。

“きちんと”客を招き入れ、おいしいものを出し、お金をいただいて
送り出す……その後の“片付け”まで迅速にしてこその商売だと思っ
た。客にそういうことを気にさせるようではプロの商売をしていると
は言えないだろう。

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