板話§六月大歌舞伎夜の部~あと二演目~

金太郎初舞台の鏡獅子の後は出し物が二本あったが、観終わった後は
すっかりもたれてしまった。

『極付幡随長兵衛』・・・吉右衛門の長兵衛と仁左衛門の水野という
顔合わせだったが、二人の芸風の違いのようなものが比較できたよう
でおもしろく観ることはできた。時代がかって遅めのテンポでじっく
りと芝居をする吉右衛門に対して、仁左衛門の水野はやや軽めで速め
のテンポという印象。

そういったこともあってか、水野の“悪”とか“アク”みたいなもの
が薄れてしまっていたように感じた。長兵衛を屋敷に招いた場面でも
奥から登場してきた仁左衛門は、ずいぶんと早足でせかせかしていて
悪人であるという感じがしなかった。もちろん、最初から長兵衛への
殺意を表に出してはということもあるのだろうが、いかにもハラが薄
いようだった。よく言えば爽やか過ぎる悪ということか……。

『髪結新三』・・・幸四郎の新三は二度目だが、最初の印象と同じ。
この人がやると重苦しい江戸っ子になってしまうのだ。彼が考える工
夫が工夫として伝わってはこない。せめて、もっともっとすっきりカ
ラリとした口調でやってもらわないと、せっかくの初鰹も傷んでしま
うではないか。

彌十郎の大家はすっかり手の内に入ったという印象。それに久々、萬
次郎の婆さんも楽しませてもらった。

何年か前に勘三郎で観た時の新三は、もっとテンポを速めてさっぱり
まとめていた。勘三郎の口跡も少しばかり鼻詰まり気味で、抜けるよ
うな感じではないが、テンポの小気味よさに救われたのである。

終演時間が21時半に近いということもあって、大詰めの立ち回り前の
幕で席を立ちだす客が目についたが、ああいうテンポで芝居が進んで
はいたしかたないだろう。というか、夜の部の終演時間は21時頃にす
るという工夫を考えてもらいたい。

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