笛話§フルートの音色を味わう

どんな楽器でもそうだろうが、演奏する場所で鳴り方、響き方がまっ
たく違って聞こえるなど珍しいことではないだろう。

自分で吹いていたことがあるから、コンサート会場でのフルートの響
き方の差異には興味がある。場所場所で音色が違うと最初に感じたの
は、東京文化会館の小ホールで聴いたオーレル・ニコレだった。あの
穴蔵のアコースティックは――だいぶ記憶が薄れてはいるが――かな
りデッドで、少し後方で聴いたせいか風音が目立ち気味の乾いた音の
ように感じられたのだ。

その後、残響の多いホールが増えてきてくれたおかげで、フルートの
響きが豊かに聴こえるようになったのはありがたい。ましてや、オー
ケストラの中でフルートの位置はほぼ中央あたりにあるわけだから、
ホールの音響の特徴が顕著に現れてくるような気がする。

……などと書きながら、虎ノ門ホールでジェームス・ゴールウェイを
聴いた時には、普通ならステージから音が出てこないような構造であ
るはずなのに、そんなことなどものともせずに低音から高音まで輝か
しく朗々としたフルートの音色を聴かせてくれたのだった。彼もまた
稀代の名人なのであるのだということを思い出していた。

《フルートのトピックス一覧》

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック